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車は混んでいるパーキングに入った。
黒のボックス車はそこらをウロウロしている。
「ねぇ?やっぱ犬?」
後部座席で横になることりが囁く。
「ど、…かな?」
助手席で椅子を倒しためいも僅かに見えるミラーを見ていた。
「テントが目的ていう確率が一番ないよね?」
めいが言うと、二人が首を縦に動かした。
「犬目的なら、犬がいないと分かれば諦めるね?ことりか私が目的なら見れば寄って来るね?」
「だろうね?行く?」
後ろでことりが聞く。
「は?何言ってんの?くくるに照会してもらってないんだぞ?そっちの人だったらどうするんだよ。」
テントは一応、二人を心配する。
「そっちの人に追われる理由は思い当たらない…。」
「同じく!」
二人は何かガサゴソと準備をしている。
「まさか?降りる気か?」
青ざめたテントが言う。
「だってさ、ずっとウロウロしてるじゃない?この車、無事に帰りたいんでしょ?通信機器?新しいのも積んでるんでしょ?」
靴下の中や、服の中の何かを入れたり確認したりしながら言う。
「それに、テントはうちの正社員じゃないでしょ?無事に帰さないといけないしね?大丈夫、うちらは慣れてる。」
大阪弁でことりが言う。
「おいおい…。そこ大阪弁出すなよ、怖いだろ?」
「テントはくくると連絡取って。20分過ぎたらここ動いて帰って。
一応、追跡されてないか注意してね。くくるに繋がったら控えたナンバー照会して、連絡くれる様に伝えて。通信は繋げておくからって。よろしく!」
「おい!大人しくしとけって!」
テントの言葉を聞かずに、助手席からめいは降りた。
それに続いて、ことりもスライドドアを開けて降りる。
「何も知らない「体」かな?」
伸びをしてことりが言う。
「そうだね。いざとなれば置いて逃げなよ?」
めいが言うと、
「冗談!家賃もうすぐ引き落としじゃない!一人ではきついって!」
と、ことりは言う。
「心配すんのそこ?まぁ…大事か。」
歩いてパーキングを出る。
車を停めて来ましたよ……という感じで二人は歩く。
会話しながら楽しそうに。
冷や冷やしながらテントはそれを見ていた。
二人がパーキング出口から100メートル程進んだところで、黒いボックス車が二人の横に停まった。
テントは小さくなり、見つからないかドキドキしながら、後部座席に移動した。
後ろの窓ガラスはスモークが掛けてあり、外からは見えないからだ。
二人の女の子を取り囲み、男が背中を押して車に乗せるのが見えた。
(やばいじゃん!)
その時、音がした。
『なんですか?犬の引き渡し終わったって…』
「それ何処じゃねぇよ! 黒の車に追いかけられて、今、二人がそれに乗せられて連れて行かれた!」
『ナンバー下さい。』
「言うぞ? 北市 と 58ー●●」
『………やばいですね?筋の方です。」
「おい!何で二人を?」
『さぁ?』
「さぁって……。」
『追けられないようにテントは戻って。タケさんとも連絡取ってますから。』
「そんな……悠長な……。誘拐だぞ?拉致だぞ!」
『静かにして下さい。二人の通信が聴こえなくなります。
拾えてますからご心配なく。戻って来てください。二人は、そこから離れて行ってます。』
「わ、分かった。戻る。」
テントはこの仕事を始めて一年。
主に車の運転と二人のサポート。
一年の間、いい就職先があればそちらを優先する。
辞めればバイトの様にレッドブルグカンパニーに戻る、そんな感じで、今までに町の不良っぽいのを相手にしているのは見ていたが、こんなやばそうなのは初めてだった。
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