曖昧な街

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世の中には2種類の人間がいる。 悪い人と良い人。 そしてこの都会には3種類の人間が住んでいる。 日の当たる場所に住む、白い道を歩く人。云うなれば「ホワイト」 夜に動き、隠れる様に住む、黒い道を歩く人。例えれば「ブラック」 そのどちらにも属さず、どちらにも入れない間の道にいる人。「グレー」だ。 まぁ、ホワイトにいる人が良い人とは限らないし、ブラックにいる人が悪いとも限らない。グレーだから、どっちでもないとも言えない。 ただ、グレーにいる人は複雑だ。 親がヤクザ、娘にはそんな事は関係ない。 生まれた家がたまたまそうだった。 彼女自身は至って普通、そしていつか日の当たる場所に行きたがっている。 親の保護下にいる今は「グレー」だ。 彼女の所為でもない。 そして、このグレーの地区に5階建のビルを持っているオーナーがいる。 少し変わり者のオーナーは、自らを「レッド」と名乗る。 そしてこのレッドの保護下にいるのが、私、神坂 真名(かみさか まな)、通称めい、だ。 常に行動を共にする事が多いのは、今、隣でローラースケートで道路を滑る、松河 小理 (まつわか こさと)、通称ことり。 二人とも一応、高卒の19歳。 住んでいるのはブラック地域、朝早くオーナーのビルまで出勤する。 「ブラック地区」というのも名称で、ホワイトに住む人はそんな地名も知らないし、自分達の場所がそう呼ばれているとも知らない。 「ほんと、朝は人がいないね?おかげでスピード出せる。」 笑いながらローラースケートのスピードを上げる。 「危ないって、転んでも助けないよ?人にぶつかっても知らんふりするからね?」 めいはスケートボード。 降りて走ったり、飛んだりしながら、街中を行く。 「これ、何て言うんだっけ?マリクレール?」 ことりが階段の手摺に乗り、ローラーを引っ掛けて降りながら言う。 「何、それ?」 ゲラゲラ笑う。 「それ、パルクールじゃないの?」 階段をスケボーで降りながら、めいは答える。 「あ、それだ。パルクール。」 「違うでしょ?ローラースケート履いてたら…。」 「似たようなものでしょ?」 5階建の白いビルの前に到着した。 スケボーから降りて手に持つと、ビルの中央にあるドアを開けた。 右手はパン屋で、左手は喫茶店。 真ん中の階段を上がる。 右に曲がり、すぐのドアを開けた。 めいは、身長156センチ細身の大きな目の可愛い子だ。色白で何故か赤い髪。 長めのショートカット、黒いキャップに、黒いジャンパー、破けたジーンズ、白いシャツ、いつもこんな格好だ。 ことりは、身長165センチ、同じく細身だが目は細めで色は同じく白い。 黒髪、ボブカット、白いキャップに黒いジャンパー、ショートの革のボトム。 白いシャツ、いつも足にはローラースケート。 「おはよー。くくる、何食べてんの?美味しい?」 「あげませんよ?どうせ今日も朝食抜きなんでしょうけどね?朝抜きはおばかの始まりですよ?」 「それ毎日言うね?なら、くれたらよくない?」 ことりが笑いながら、定位置の椅子に座り、ローラースケートを脱ぎだした。 「嫌ですよ!私は頭脳派なんです。朝食は大事な栄養です。」 くくる、と呼ばれた少女はそう言い返した。
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