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高科 貴規
高科 貴規(たかしな あつき) は、その日の朝も何故か早起きして窓から外を眺めていた。
6階建てのマンションの5階、誰も入れない自分だけのパーソナルスペース。
その窓から自分達の間ではグレイゾーンと呼ばれている方向を見る。
坂道を、二人の女性が朝日に照らされて登って行くのが見える。
「今日も元気に出勤ですね……。」
呟いて暫くはそれを見て、また眠りに就く。
最近はずっとこんな生活が続いていた。
貴規は夢を見た。
懐かしい一年前の夢だ。
いや…本当はもっと前から、彼女の事は知っていた。
グレイゾーンで生きてきて、何故か事務所のあるマンションに住み始めた。
若い女の子なのに、平然と事務所横のエレベーターからロビーを通過して行く。
最初は……グレイゾーン育ち、頭足りないんだろ。使えるかな?位の興味だったと思う。
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