高科 貴規

4/5
552人が本棚に入れています
本棚に追加
/198ページ
(グレイ育ちに、怖さをどうやって分からせようか?) それから俺はそればかりを考えた。 所詮、女の子だから…と考えての脅しは無駄だった。 それなら、多少の暴力は仕方ないか…と考え始めた。 朝も帰りも大体、同じ時間にだった。 朝早い時間に、二人が通る道に通せんぼをした。 歩いて来た二人は、怪訝な顔で俺を見た。 「何かご用ですか?」 二人だから4人、若い奴を連れて来ていた。 数発殴って痛い目を見れば出て行くだろう…その考えはすぐに覆された。 5分…その程度の時間で男二人がアスファルトの上に倒れた。 (ちょっと…待て。何なんだ?こいつら…。高科を敵に回してもいいのか?) 呆然と考える俺に、グレイ育ちは近付いて来た。 俺の顔僅か10センチばかりの距離で、背伸びをして見る。 「何だよ!」 綺麗な顔が近過ぎて、この俺が思わず照れた。 「出て行かせたいならちゃんと手順を踏んで?悪いけど脅しも暴力も無駄だから…。それと借主は私一人だから、この子にはもう手を出さないで? 次にこの子に手を出したら、私…何をするか分からないから…。」 今までと違う顔、違う声、違う態度…別人がいると思った。 背筋がぞくりとした。 「で、て行けば…何もしない。」 負け惜しみ…もうこの時、俺は蛇に睨まれたカエルだった。 「手順を踏んで?竜堂組の一派でしょ?あそこの組長さんはいい人よ? よろしくね?」 と言い、もう一人、少し怪我をした彼女に肩を貸して歩いて行った。 グレイゾーンへと。 俺はそれを見ているだけで…見ているだけに耐えられずに、マンションのロビーに入った彼女を拉致して部屋に入れた。 「俺の女になる気はない?」 「あるわけないでしょ!!」 一発、顔に入れたが、不思議なもんで……女は殴れないとか、母親の顔が浮かんだり、目の前の女が好きなんだとか、その1発で自覚する。 そして俺はボコボコにされて、容赦なく放置された。 以来、微妙な距離を取りながらも見続ける日々。 隣は空いてるのがいいと言っていたから、空けたまま。 自分は真下に引っ越して来た。 何とも情けない高科が…と自分でも思う。
/198ページ

最初のコメントを投稿しよう!