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(グレイ育ちに、怖さをどうやって分からせようか?)
それから俺はそればかりを考えた。
所詮、女の子だから…と考えての脅しは無駄だった。
それなら、多少の暴力は仕方ないか…と考え始めた。
朝も帰りも大体、同じ時間にだった。
朝早い時間に、二人が通る道に通せんぼをした。
歩いて来た二人は、怪訝な顔で俺を見た。
「何かご用ですか?」
二人だから4人、若い奴を連れて来ていた。
数発殴って痛い目を見れば出て行くだろう…その考えはすぐに覆された。
5分…その程度の時間で男二人がアスファルトの上に倒れた。
(ちょっと…待て。何なんだ?こいつら…。高科を敵に回してもいいのか?)
呆然と考える俺に、グレイ育ちは近付いて来た。
俺の顔僅か10センチばかりの距離で、背伸びをして見る。
「何だよ!」
綺麗な顔が近過ぎて、この俺が思わず照れた。
「出て行かせたいならちゃんと手順を踏んで?悪いけど脅しも暴力も無駄だから…。それと借主は私一人だから、この子にはもう手を出さないで?
次にこの子に手を出したら、私…何をするか分からないから…。」
今までと違う顔、違う声、違う態度…別人がいると思った。
背筋がぞくりとした。
「で、て行けば…何もしない。」
負け惜しみ…もうこの時、俺は蛇に睨まれたカエルだった。
「手順を踏んで?竜堂組の一派でしょ?あそこの組長さんはいい人よ?
よろしくね?」
と言い、もう一人、少し怪我をした彼女に肩を貸して歩いて行った。
グレイゾーンへと。
俺はそれを見ているだけで…見ているだけに耐えられずに、マンションのロビーに入った彼女を拉致して部屋に入れた。
「俺の女になる気はない?」
「あるわけないでしょ!!」
一発、顔に入れたが、不思議なもんで……女は殴れないとか、母親の顔が浮かんだり、目の前の女が好きなんだとか、その1発で自覚する。
そして俺はボコボコにされて、容赦なく放置された。
以来、微妙な距離を取りながらも見続ける日々。
隣は空いてるのがいいと言っていたから、空けたまま。
自分は真下に引っ越して来た。
何とも情けない高科が…と自分でも思う。
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