捕獲!

5/5
前へ
/198ページ
次へ
『建物に入る前に捕まえたい!』 通信機からめいの切迫した声が聴こえる。 『後、差は?』 相手の場所が分からないくくるは地図上のめいのGPSを見ながら聞く。 『もう…少しで…手が…』 届きそうで届かない。 相手も必死で逃げているわけだし、仲間を呼ばれても面倒。 只でさえ、もう4人、のして来ている訳だし、当然仕事場で報告はするだろう。 これ以上目撃者は増やしたくないのが本当のところだ。 (チッ…。入られたら行くしかないか…。) ここで目を離して、匿われたらさらに面倒。 エンドストームのオーナーは恐らくはこれを知れば、知っているかもしれないが、議員の息子なんかはいいカモだろう。 (依頼者の不利益は……自分達の不利益!) 無理にスピードを上げる。 「この先、仕事がなくなったらどうしてくれんのよ!!」 指先に僅かに服が引っかかる。 建物に入る寸前、金髪が仲間を大きな声で呼ぼうとした瞬間、上から人影が金髪の上に落ちた。 そのままグシャッと倒れ込んだ。 「つ…捕まえた……。」 スケボーが転がり、めいも服の裾を持ったまま転がった。 スライディングだ。 金髪男の背中の上に、ローラースケートのことりの姿があった。 『間に合った!』 笑顔で通信機に話し、ことりは金髪を立たせる。 「急いで離れよう?めい怪我は?」 「ない!助かった、ことり。指に引っかかるだけじゃあ、止められなかったよ。」 「引っ掛けてくれたからいいタイミングで上から捕獲出来た。じゃなきゃ、上手いこと背中に乗れない。」 ーー パン!! ーー お互いの仕事をナイスと褒め合う代わりにハイタッチする。 「急ごう。」 すぐに金髪を二人でがっちりホールドして移動を開始した。 「何だよ!お前ら!離…んーんーん!!」 「ちょっと静かにしてようねぇ?」 大きな声を出した口にパンを捻じ込まれた。 裏通りの細い路地に入る。 背中で手を捻じ上げたまま、金髪男を歩かせる。 目立たない辺りで停止して、めいは金髪男を正面に向かせる。 「顔上げて!」 腕をさらに捻じ上げ、パンは落ちる。 「イテッ!!痛えよ!」 文句を言いながら、男は素直に顔を上げた。 ことりは写真を腰のウエストポーチから出して、顔の横に並べた。 「間違いない!君、いい顔だね?」 言いながら写真を戻した。 「上原 竜くん?16でいいね?」 後ろからの声に返事をしない。 めいはぐっと力を込める。 「いたっ!痛え!分かった!そうだよ!それでいいだろ?」 その様子を見て、 「わぁ、素直…。」 と、ことりが言う。 『反対出口、テント待機予定、到着まであと30秒!』 「30秒……。行こう。」 めいが通信を聞いて上原の背中を押して歩き出す。 「何だよ!何処行くんだよ?」 「テントさぁ?来るの遅いよね?もっと早く来て、入り口あたり塞いでくれたら良くない?」 少し歩きながら言い、細い路地の出口に到着する。 塞ぐ様に止まった黒いワゴンをことりは開けた。 「俺は実働部隊じゃないの!フォロー!」 運転席から振り返りテントが言う。 先にことりが乗り込み、1番後ろに上原を乗り込ませた。 最後にドアの前にめいが乗り込むと、ドアを閉めると同時に車は動いた。 上原は捻じ上げられていた腕を摩りながら、二人を睨んでいた。
/198ページ

最初のコメントを投稿しよう!

570人が本棚に入れています
本棚に追加