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『建物に入る前に捕まえたい!』
通信機からめいの切迫した声が聴こえる。
『後、差は?』
相手の場所が分からないくくるは地図上のめいのGPSを見ながら聞く。
『もう…少しで…手が…』
届きそうで届かない。
相手も必死で逃げているわけだし、仲間を呼ばれても面倒。
只でさえ、もう4人、のして来ている訳だし、当然仕事場で報告はするだろう。
これ以上目撃者は増やしたくないのが本当のところだ。
(チッ…。入られたら行くしかないか…。)
ここで目を離して、匿われたらさらに面倒。
エンドストームのオーナーは恐らくはこれを知れば、知っているかもしれないが、議員の息子なんかはいいカモだろう。
(依頼者の不利益は……自分達の不利益!)
無理にスピードを上げる。
「この先、仕事がなくなったらどうしてくれんのよ!!」
指先に僅かに服が引っかかる。
建物に入る寸前、金髪が仲間を大きな声で呼ぼうとした瞬間、上から人影が金髪の上に落ちた。
そのままグシャッと倒れ込んだ。
「つ…捕まえた……。」
スケボーが転がり、めいも服の裾を持ったまま転がった。
スライディングだ。
金髪男の背中の上に、ローラースケートのことりの姿があった。
『間に合った!』
笑顔で通信機に話し、ことりは金髪を立たせる。
「急いで離れよう?めい怪我は?」
「ない!助かった、ことり。指に引っかかるだけじゃあ、止められなかったよ。」
「引っ掛けてくれたからいいタイミングで上から捕獲出来た。じゃなきゃ、上手いこと背中に乗れない。」
ーー パン!! ーー
お互いの仕事をナイスと褒め合う代わりにハイタッチする。
「急ごう。」
すぐに金髪を二人でがっちりホールドして移動を開始した。
「何だよ!お前ら!離…んーんーん!!」
「ちょっと静かにしてようねぇ?」
大きな声を出した口にパンを捻じ込まれた。
裏通りの細い路地に入る。
背中で手を捻じ上げたまま、金髪男を歩かせる。
目立たない辺りで停止して、めいは金髪男を正面に向かせる。
「顔上げて!」
腕をさらに捻じ上げ、パンは落ちる。
「イテッ!!痛えよ!」
文句を言いながら、男は素直に顔を上げた。
ことりは写真を腰のウエストポーチから出して、顔の横に並べた。
「間違いない!君、いい顔だね?」
言いながら写真を戻した。
「上原 竜くん?16でいいね?」
後ろからの声に返事をしない。
めいはぐっと力を込める。
「いたっ!痛え!分かった!そうだよ!それでいいだろ?」
その様子を見て、
「わぁ、素直…。」
と、ことりが言う。
『反対出口、テント待機予定、到着まであと30秒!』
「30秒……。行こう。」
めいが通信を聞いて上原の背中を押して歩き出す。
「何だよ!何処行くんだよ?」
「テントさぁ?来るの遅いよね?もっと早く来て、入り口あたり塞いでくれたら良くない?」
少し歩きながら言い、細い路地の出口に到着する。
塞ぐ様に止まった黒いワゴンをことりは開けた。
「俺は実働部隊じゃないの!フォロー!」
運転席から振り返りテントが言う。
先にことりが乗り込み、1番後ろに上原を乗り込ませた。
最後にドアの前にめいが乗り込むと、ドアを閉めると同時に車は動いた。
上原は捻じ上げられていた腕を摩りながら、二人を睨んでいた。
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