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家出少年
「暑い〜!倒れる!熱中症だ!!」
だらだら歩きながら横でことりが呟いている。
「もういいよ?テントの車で少し休憩しておいでよ?2人いても目撃情報が増える訳じゃないし…。」
元気な熱中症患者だなぁと思いながら、めいはことりに言った。
「マジで!ほんま、ありがとう!助かるわ。死にそうやったから。後で交代するからね?」
嘘ではなかったなと…大阪弁を聞いて思った。
ことりは多分、母親が大阪弁を話していた。
小さい頃から聞いて育って、それを覚えてしまったのだろう。
父親と二人の時は大阪弁が出ない様にしていた。
母親と妹が居なくなってからは尚の事だ。
油断すると大阪弁が出る。
出るほど疲れていたんだと思った訳だ。
「うわぁ…生き返る。水、頂戴。」
後方で待機していたワゴン車に乗り込み、すぐに言う。
助手席に置いたクーラーボックスからテントはペットボトルを出して、座席の間から後ろに手を出して渡した。
「いいのか? めい、一人で…。」
「後で交代に行くよ。めいも何か飲まないと倒れちゃうよ…。」
水を飲み、クーラー全開を要求する。
「ずっと不思議だったんだけどさ?何で実働部隊は二人なんだ?しかもお前達、女の子だろ?一応?」
「一応は余計……。私達の前に先輩はいたよ?男性。カッコよかった!」
「その人は?辞めたのか?」
「ん、だね?長く続ける仕事じゃないでしょ?」
一度閉めた蓋を開け、ことりはまた水を飲んだ。
それ以上、その男性の話はテントは聞けなかった。
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