思い出をひらいて

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思い出をひらいて

頬につめたいものがつたう なんて顔してんの そう言ったのは、自分自身だった ずっと、みてみぬふりをしてきた 痛みなんて、涙なんて、ないものだと思っていた でも違った ひんやりとした背表紙にふれて、気づいた 確かにあった、ここにあったんだ いつのまに、こんなに、つめたくなったのか どうして泣いているのか わからない あんたは、もういないのに すっかり、ほこりをかぶって それでも、今日は続いていく だから 感情を取り戻した人形は ひんやりした背表紙を撫でて、また歩いていく ぽつり、残されたアルバムには、優しい笑顔がたくざん、収められていた
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