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三
中間テストの結果は予想以上の結果だった。
連休中も莉緒さんに呼び出され、一緒に勉強したのもあって思ったよりもいい成績が取れたのだ。
あの先輩、友達と勉強会するのが夢だったらしく毎日のように僕を呼び出した。
「教えてあげるから駅前の喫茶店に来なさい」
電話で一方的に用件を伝えると、一方的に電話を切る。
それが莉緒さんだ。今更気にしない。
「和人、どうだった?」
坂内がげんなりとした顔をしながら、自分の個人結果表を持ってきた。
「思ったより良かったよ」
そう言って僕の個人結果表を見せるとため息をつかれてしまった。
「いいよなぁ。どうせお前は美人な先輩にあんなことやこんなとこまで教わってんだろ? その上勉強まで。おかしいだろ。なんで俺にはそういうイベントが起きねぇんだよ」
と一人で盛り上がっていた。僕はそのリアクションを無視して気になることを聞いた。
「おい、美人な先輩と、てなんだ?」
「何って和人、毎日のように木崎先輩とデートしてんだろ? もう学校中に広まってるぜ? 学校一の美女が普面の男子と付き合いだしたって」
「なんだそれ」
僕は笑いながら坂内に付き合っていない事を丁寧に話した。
会ってはいるが、やっていることとすれば莉緒さんの理想を叶える、いわば寂しい人の夢の手伝いだと伝えたところで坂内は腹を抱えて笑いだした。
「なんだそれ。超寂しい人じゃん。でも可愛いじゃん結局。和人、代わってくれ」
「やめとけ。慣れないと疲れるぞ。お前なら多分一日も持たない。禿げるぞ」
そう脅しをかけてから僕は席を立った。
「木崎先輩と昼食か?」
坂内が恨めしそうな声で言うから、僕は満面の笑みで答えてやった。
「おう! 手取り足取り教えてもらってくる!」
聞かれたら絶対に殺されるやつだ。
「なーんか変な噂広まってるのよねー」
それは莉緒さんの耳にも届いているようだった。
「教えてくれる友達いたんですね」
屋上で彼氏でもない一個下の男の子と昼食を共にしてる時点で彼女に友達がいないのは明白だが、少し嫌味っぽくわざと言ってみた。
「クラスの女子が嫌味ったらしく私に聞こえるように話してるのよ。あームカつく!」
僕の嫌味は完全に無視され、怒り任せに空になった牛乳パック僕にを投げつけてきた。
少し残っていた牛乳がズボンにかかった。
「あー! どうしてくれるんですか! 絶対臭くなるじゃん」
莉緒さんはそっぽを向いてあんぱんを頬張っていた。
僕はポケットからハンカチを取り出して拭いてみるが、早くも日差しに照らされて嫌な臭いを放ち始めていた。
「もう臭い始めてるんですけど」
「そんなに早く臭い始めるわけないでしょ…臭っ」
臭いを嗅いだ莉緒さんは鼻をつまんで少しニヤついていた。
「ざまぁないわね」
「僕何かしました??」
僕は牛乳の染みを拭き取るのを諦め、おにぎりを一口齧った。
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