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「捕まったのなら最初に警察に行くべきかな?」
少し冷静になった頭で考えれば、家に和人がいない事くらいすぐにわかるはずなのに。
落ち着け、私。
家の最寄駅の三つ手前の駅で私は電車を降りた。走って改札を抜けて警察署のある方角へ急ぐ。
何個も信号に引っかかり、その度に食べ私は舌打ちをした。
「神様の意地悪」
心の中で呟いて最後の信号を渡った。
警察署が見えて来て、私は走る速度を上げた。
呼吸を整えないまま警察署の中へ入り、カウンターになっているところに駆け込む。
「ど、どうしましたか?」
人の良さそうな警察の人が私の慌てっぷりを見て少し驚いている。
「あの、こちらに杉浦和人君が連れてこられた…連行されたと聞きまして」
「あー昨日の」
そう言って警察の方はパイプ椅子に腰掛けた。
「杉浦君なら昨晩、お家に帰られましたよ。三人組の方も」
「え、でも逮捕されたんじゃ…」
「今回、担当警部の温情で輔導扱いになったんです。女の子のために体を張った杉浦君に感動したとかなんとかで。いやー警察がそんな甘いこと言ってちゃ…」
「ありがとうございました!」
私はまた聞き終える前に駆け出した。
「い、いえー」
と人の良さそうな声が後ろに聞こえたが、会釈もせず私は自動扉の隙間から警察署を出た。
女の子のために体を張った?
それって私のため?
そんなバカな。
でも、相手があの三人だ。
きっと私のいないところでまたちょっかい出して来たのだろう。
許せない。
「はぁ…。はぁ…。はぁ…。和人…」
信号の待ち時間では呼吸が整わなくなってきた。
横っ腹も悲鳴を上げている。
「だめ、走って。私」
私は速度を落としながらも和人の家に向かって走った。
私を地獄から救い上げてくれた彼の為に。
彼の為?
いや、違う。
会いたい。早く。あなたに会いたい。
真夏でもないのに滝のように汗が流れてくる。腕のところは汗でシャツが肌に張り付いている。
ベストを着ていなかったら、汗でシャツが透けてブラジャーが丸見えになっていただろう。
こんな姿見られたくない。でも、着替えてる時間があるなら早く和人に会いたい。
引かれてもいい。嫌われてもいい。彼の無事をこの目で確認したい。
横っ腹を抑えながら、重たくなった足を引きずるようにして私は走った。
和人の家の前に着いた時、安堵して座り込んでしまった。
しかし、安堵するのはまだ早いと頭を振り、ゆっくりと立ち上がってエントランスの中へ入った。
309。
以前和人に教えてもらった部屋番号を入力して通話ボタンを押す。
一回、二回、三回。呼び出し音がなり終わる。
そして4回目の呼び出し音がなり終わろうとした時
「莉緒さん?」
和人が出てくれた。
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