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 僕と先輩は腕を組んで歩いていた。  先輩が当たり前のようにそうするから、僕は何も言わずに胸の感触を肘のあたりで確かめながら楽しく歩いている。  どこに向かっているのかはわからないが、先輩はハッキリとした意思を持って歩を進める。  高速のインターが見えてきた。  この辺りに何かあったかなと考えたが、思いつくのはラブホテルしかなかった。あとはチェーンの中華屋とコンビニ。牛丼屋は最近潰れてしまった。  「まさかな」と小声で呟くと、先輩は「ふふ」っと小さく声に出して笑った。期待していると勘違いされたのか?  言い訳をしようか悩んでいると、そのままコンビニの前を通り過ぎる。  「先輩、あとは中華屋しかないですよ?」  とわざとらしく惚けてみた。  「本当にそれだけ?」  先輩は僕を見上げながら瞬きをする。  「まさか、ね」  「まさか、よ」  先輩は、ラブホ街で一番安いホテルに僕を連れ込んだ。  「やめましょ。良くないです」と抵抗はしてみた。  「杉浦君は女に恥をかかせる気?」  言い返す言葉を探している間に、先輩は部屋をタッチパネルで部屋を決めると僕を引っ張ってエレベーターに乗り込んだ。  扉が閉まり三階のボタンを押してエレベーターはゆっくりと動き出す。  三階について扉が開き、慣れた足取りで部屋の前まで僕を連れて歩き、なんの躊躇もなく先輩は扉を開いた。  初めて来るラブホテルが彼女ではなく、学校一の美女とだなんて中学生の時の僕には想像もできなかっただろう。  「シャワー浴びてくる」  そう言いながら先輩は、ブレザーとニットのベスト抜ぎ、スカートのホックを外しファスナーを下ろす。  「待って、先輩。どうしてこうなるの?」  先輩が後ろ向きでスカートを脱ぐと、紫色のショーツがワイシャツの後身頃から透けて見えた。  「まだそんなこと言えるんだ」  そう言うと先輩はこちらを振り向き歩み寄ってきた。  ベッドの前に立ち尽くしていた僕を押し倒して、いけないところに馬乗りになる。  「こう言うのが好みなの?」  そのまま先輩はワイシャツのボタンを外し出す。  透けて見えていたブラが露わになり、先輩は下着姿になった。  「だからそういう意味じゃなくて。良くないです!」  硬くなる体の一部を無視したまま僕は抵抗してみせるが、先輩はそれを上から温度のない笑みを浮かべて眺めるだけだ。  体を倒し顔を近づけてくると、シャンプーのいい匂いと、それとは違う麗しい女の香りが僕を包んだ。  「まだそんなこと言えるんだ」  先輩は下の方に手を伸ばすと、僕の物を弄りながら「ふふ」と不敵に笑った。  ファスナーが下されてズボンの中に手が入ってきた。  「こっちは反応してるよ? 大丈夫。先輩、慣れてるから」  そこで僕は上体を起こし、力づくで先輩を押し倒した。  先輩に覆いかぶさるようにして先輩を見下ろすと、驚いた顔をした先輩の瞳には涙が溜まり始めていた。  「先輩だって本当は怖いんでしょ? ダメだよ。不用意にこんな所で男を誘惑なんかしたら」  「何言ってるのよ。こういうことがしたいから私に近づいてきたんでしょ? 親身になるふりをして、結局は私としたいだけなんでしょ! 」  僕の中で何かが切れる音がした。  「馬鹿にするな! 」  怒声が部屋に響いた。  先程までの余裕のある顔が、不安と恐怖で埋め尽くされた顔に変わる。  先輩のまつげの長い、大きくてパッチリとした目から涙が溢れた。  「な、なによ。何カッコつけてんのよ! 男なんて皆そう。心配するフリして結局最後は求めてきて、それが終わったら、はいさよなら。あんただって同じなんでしょ! だったら早くしなさいよ! ヤるだけヤって私の前から消えなさいよ!」  体を起こしてベッドから降りると先輩の着替えを一式抱え、それからベッドにそれらを放り投げた。  「着てください。僕は先輩とこういうことがしたくて近づいたんじゃない。僕と同じ目をしてたから。二年前の僕と同じ目をしてたから。ただそれだけなんです」  先輩は体を起こすと、涙を流したまま不思議そうにこちらを見つめる。  隠そうとしない胸の谷間に僕は今更ながら照れてしまい、目を逸らす。  誤魔化すように色んなところを探ってみると、冷蔵庫を見つけた。  その中に二本、無料のペットポトルの水を見つけて取り出すと一本を先輩に投げ渡した。  「ありがとう」  受け取ると先輩は初めて可愛らしい、女の子の顔をした。  僕が早く着るように促すと、先輩はベッドの上でしわくちゃになっていたワイシャツを羽織った。  依然としてブラジャーは透けて見えている。
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