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           ・  窓から差し込んでいた日差しがいつの間にか消えていた。  暗闇の中を、窓辺だけが月光に照らされていた。  スマホで時間を確認すると十九時になっていた。  莉緒さんが眠って、安心した僕は一緒になって寝てしまったらしい。  「莉緒さん、起きて」  莉緒さんの肩を優しく揺すった。  莉緒さんは静かに僕の胸から離れた。  「今何時?」  「十九時です」  「結構寝ちゃったのね。ごめんね。取り乱したところ見せちゃって」  そう言って平静を装っている莉緒さんの声は元気がなかった。  ソファから立ち上がり、スイッチを押して部屋の明かりを点けた。  眩しくて目を細める。  すぐに慣れて、莉緒さんの姿をハッキリと確認する。  こちらを見つめる莉緒さんの目は腫れ上がっていて、ミス豊ヶ浜とは程遠い疲れ果てた顔をしていた。  でもなんだかそれが可笑しくって僕は笑った。  「普通笑う? だからデリカシーないって言うのよ」  「ごめん。笑うつもりなかったんだけど。ほら」  そう言って僕はスマホのカメラを起動してインカメモードにして莉緒さんに渡した。  莉緒さんは自分の顔を五秒ほど真剣に眺め、堪えきれなかったかのように「ぷっ」と吹き出した。  二人して声を出して笑った。  こんなに笑えるのは、一つ壁をクリアしたからだ。  僕らはまた一歩踏み出せたのだ。  「さ、私は乗り越えたわよ。次は和人の番だからね」  腫らした目のまま凛々しい顔を作ろうとする莉緒さんを見て僕は更に笑ってしまった。  莉緒さんもつられて一緒になって笑った。  ひとしきり笑い終えて、呼吸を整える。  「わかってますよ。だから、ちゃんと見ていてくださいね」  莉緒さんが立ち上がり、僕たちは抱きしめあった。  僕は離れません。あなたから。ずっと側にいます。  心の中でそう呟くと「あ」と莉緒さんが声を出した。  「どうしたんですか?」  「シャツ、乾かしてない…」  時既に遅し。  僕らは可笑しくてまた笑ってしまった。  極度の緊張で頭がおかしくなってしまったのかもしれない。  だとしても、感情を表に出して、それを分かち合える人が側にいるのはとても幸せな事だ。  「そういえば、和人。処分てどうなったの?まさか…退学…?」  莉緒さんが顔を上げて唐突に、思い出したかのように聞いてきた。  莉緒さん。タイミング、悪くない?  「停学ですよ。二週間。たんまりと課題渡されましたよ。わざわざ警察署に持ってくるから驚いちゃいましたよ」  「そう、良かった」  そう言って再び僕の胸に顔を預けた。  僕らは今、とても幸せだ。
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