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五軒六軒歩いたところで尾瀬沼は
『ここだここだ。ここが敏男の家だ。敏男、尾瀬沼だ、出て来〜よ。』
結城と野間口はやっと追いついたところで家の中から敏男さんが出てきた。
『何だ?どうした?いきなり呼んで。』
尾瀬沼は敏男に南雲の件を伝えると驚き
『南雲が一体誰に………わかった、南雲の為だ協力すっぞ。麗子さんの写真を探してくるから待っとれ。』
そう言うと敏男は家の中に入った。
尾瀬沼は
『南雲と北村と………北村って敏男の事な。俺と三人は小学校時代から親友でな。南雲だけは中学卒業後に高校に行く為に東京に行き、アルバイトしながら学費を稼ぎ苦労しながら卒業して警察採用試験を受けて合格して、警察学校に入ったんだ。ちなみに、敏男の横のこの家が南雲の家。』
結城は尾瀬沼が指をさした家を見て
『隣が南雲さんの家だったんですか………』
野間口は
『石黒麗子さんは中学卒業後はどうしたんですか?』
尾瀬沼は
『確か郡山市の高校に進学し大学は東京だと聞いてる。』
暫くして敏男が家から出てきて
『昔の写真しかないぞ。これは南雲と麗子さんと子供達の写真で、これは俺と尾瀬沼が、何人か同級生を集めて二人が夫婦になった時にお祝いをした時の写真だ。』
結城は
『この写真をお借りしたいのですがいいですか?』
敏男は
『南雲の為だし持ってけ。後で返せな。しかし一ヶ月前に南雲が帰って来たと思ったら夕方に息子も帰って来てたのが最後だった。あの時、会話しておくべきだった………』
結城は
『一ヶ月前に南雲さん、戻ってきたんですか?』
尾瀬沼も
『何、南雲の奴 俺のところには来なかったぞ。』
敏男は
『夕方に息子も帰ってきて親子水入らずの時間と思って、声はかけなかったんだ。そしたら次の日の朝には家の中に誰も居なかった。何しに戻ってきたんだか。』
結城は
『何しに来たんでしょうね。』
その時敏男の肩に九官鳥が止まった。敏男は
『半年前から餌付けしたら慣れたみたいで俺の肩に乗る様になった。』
オマエノサキントウシタカネ
結城は九官鳥の言葉に
『ん?何て言ってるんですか?』
敏男は
『俺も何を言ってるのかわからないんだ。一ヶ月前、南雲さんが帰ったあとからこんな言葉を。』
結城は笑って
『へんな九官鳥だな。誰かのイタズラ?何かの歌?これ笑い話しに声を録音して貰っていこうか。』
尾瀬沼も笑って
『どこぞやの酔っ払いのうわ言でも覚えてきたか。笑い話しを振り切って爆笑話しになるぞ。』
敏男も笑って
『それ違げぇねぇな。だから九官鳥は面白い。』
二人は南雲の住んでいた部落から会津若松市の東山温泉に向かった。
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