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懺悔其の二十一 真実は……
今日の迷える子羊は超大物です。
「すいません、私は灰村と言います。懺悔をしてもいいでしょうか?」
「分かりました聞きましょう」
灰村と名乗ったこの人物、正直性別が分からない。
頭髪は無く顔が大きく逆卵型、目は顔の半分近くの大きさで黒目しかなく鼻は小さく、つーか鼻の穴しかなくね?
身体は小さく身長は小学生低学年くらい、服は着ていない……と思う
ぶっちゃけて言えばこの灰村さん小さな灰色にしか見えない。
一時世間を騒がせたあの有名人である、小さな灰色さんなのだ、アタシはこの出会いに感動すら覚えている、そこらの有名人なんかに会うのより何倍も凄いぞこれ。
「そろそろ、私も国に帰ろうと思いまして。そのためにはここでしてきた様々な事を懺悔しておこうと思いましてね」
「帰ってしまうんですか?」
とても残念だせっかく会えたのに。
「ええ、大鼻緑さんも雲母さんも帰ったようですし」
ああ、大鼻緑も雲母も最近テレビでも見ないと思ったら帰っていたのか……
「そうですか、せっかく会えたのに残念です」
「ははは、仕方ありませんよ。こちらでやることが無くなってしまいましたからね」
「さて、それで懺悔の方をお聞きしましょう」
灰村氏は目を閉じる。あ、瞼あったんだ。
「私達は多くの家畜や農家さんに迷惑をかけてきました」
「ああ、アブダクションやミステリーサークルですね」
「お? 貴女、通ですね。アブダクションで覚えているなんて」
「はは、キャトルミューテレイションとアブダクションは良く間違えられてますからね。まあテレビがキャトルミューテレイションで放送してたから、混同してしまってるのはしかたないですけどね」
そうなのだ一般的に知られているキャトルミューティレーションは動物の死体の一部や血液がなくなっている状態の事で、UFOが攫って行くことではないのだ。UFOが人や家畜を攫っていくことはアブダクションという。
まあ、怪現象なのには変わらないのだけどね。
「いやー、一時期ハマっていましてね、それで少し知識が有るだけですよ」
「そうでしたか」
アタシは柄にもなく少し語ってしまった、さて本題の懺悔を聞かないとね。
「すいません、少しはしゃいでしまいました」
「いえいえ、私達も貴女のような方に覚えていてもらえて光栄ですよ」
「それでは懺悔をお聞きします」
アタシは改めて灰村に懺悔するように勧める。
「はい、我々は多くの家畜の血を抜き、地球上の生命体を調べるふりして悪戯に動物を殺めていました」
ん? 調査目的じゃなかったの
「あれは調査目的ではなかったのですか?」
「違います!」
きっぱり言い切ったよ。
「では、何目的なのですか?」
「目立つためです!」
「ぇー……」
えー、ミステリーじゃなく悪戯だったってこと?
「あとはミステリーサークルについての懺悔です」
「アレは地球人が悪戯で作ったという説もありますが、実際の所どうなんですか?」
アタシはミステリーサークルの真実を聞きたくて懺悔を遮って聞いてしまった。
「あーあれですか、半分は我々で半分は貴女の言った通り人間の悪戯なんですよ。最初は我々が作ったのですが、その後地球人が模倣犯として作っていたようですね」
「なるほど」
半分は本物だったということか。
「さて、そのミステリーサークルでも懺悔させてください。アレも意味深なメッセージに見せた悪戯なんです」
「悪戯なんですか?」
「はい、あれ一応メッセージではあるのですが。警告のような意味深なメッセージではないんですよ」
「でも一応はメッセージなんですね」
「そうです」
メッセージではあるのか、無意味な記号でなくて安心したよ。
「どんなメッセージだったんでしょうか?」
「最初のミステリーサークルなんですがアレは『御主人アンタの嫁さん、今頃隣のオヤジとベッドでよろしくやってるぜ? 気付いてないのはアンタだけだ』そんな意味のメッセージだったんですよ」
「浮気報告だったのかよ!! あんな円でそんなこと読み取れるか!」
しかも何でアメリカンジョークっぽく書くんだよ。
「いやー、そんなくだらないメッセージでもそれっぽく書けば、目立てるかなと思いまして」
「くだらいよ確かに! くだらなくないのはその農場の夫婦だけだよ!」
何てことだ、この話を聞くと宇宙人の目的って地球で目立つ事なだけじゃないのか?
「ちょっと、話聞いてると目的って目立つ事なだけで意味深なことは一切無し?」
「そうですよ、それだけのために地球に来たんですから」
「まじかー」
「いやー、矢〇さんにはお世話になりましたよ、私どもを扱っていただいて」
矢〇さん、宇宙人は本当にいましたが深い意味はまったっく無かったようです……
「いやー、MJ十二の方々も我々の惑星ドッキリに付き合ってくれて感謝しかないですよ」
「惑星ドッキリって……」
規模のデケードッキリだなおい。
地球の皆さん、我々は惑星規模のドッキリを仕掛けられていたようです。
「そう言えば地球圏でUFOレースを開催したこともありましたね。これも懺悔しておきます」
「レース?」
「ははは、よくUFOが目撃されてたでしょ、アレはレースしてた時なんですよ」
大きな目を細めてカラカラと笑う灰村。
「てことは地球に来てた理由って……全部目立つためのドッキリだと?」
「そうですね、懺悔と言う名のカミングアウトです」
「なんだとー! いや、宇宙人は証明された、しかし……その理由がふざけている」
「いやー、ですが最近は我々の事を忘れられてるような気がしましてね。ここらが潮時だと思い自分たちの国へ帰ろうという訳ですよ」
アタシのあのドキドキを返してほしい……たいした意味が無かっただなんて。
「さて、カミングアウト出来たことだし、そろそろ失礼します」
「あー、はいはい。きをつけてー」
アタシはもう投げやりに返事をする。
今までミステリーとされていた事は全部、悪戯であった事実を知らされたアタシは想像以上にショックだったようだ。
スキップしながら懺悔室を出て行った灰村こと小さな灰色。
「チュパカブラとかは本当にいるよな?」
知りたくもない真実を知ってしまったアタシは、未確認生物が本当にいたらいいならと思うことにした。
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