2人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
道行く人達はちらり、とその人物に目を走らせるが、なにか納得した顔で通り過ぎていく。
後で知ったのだがこの時、映画の撮影ロケが偶然にも行われていて、歩行者天国の両端にプラカードを持ったスタッフが「ご協力お願いしまーす」と呼びかけていたらしい。当の撮影カメラはオープンしたての自然派カフェの中で、通りの光景なんかまるで関係無かったらしい。
件の人物が襟を引き下ろし、口元を覗かせた。ニヤリと歪ませた口元にある筈のない牙を僕は見た様な気がした。
ボソリ、とつぶやく唇の動きは
「見つけたぞ」
と言った様に感じた。
瞬間、人物は怪鳥の様に駆け(まるで飛翔したかの様だった)、
一人のスーツ姿の男の前に立ち塞がった。
最初のコメントを投稿しよう!