ダストマン

1/26
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/26ページ
土曜の午後、ローカル私鉄の改札出口から、繁華街に向かって伸びる歩行者天国。 通りの両側には都会からの出向だろう。 ○イや、東Q百貨店、ROFTの入ったテナント等、商業ビルが立ち並ぶ。 若者が寄り付きやすい様に企画されているよなあ、と僕は思う。 たった今、ビル上階(と言っても地方の事。7階止まりだ)の貸し会議室で、商談をまとめてきた僕はケソタッキーの一階で遅い昼食を取っている。 通りに面したカウンター席でガラス一枚先を眺める。 着飾った若者たち。 着飾っていない若者たち。 デパートの紙包を抱えた、年配の方々。 お疲れ様です、僕と同様、スーツ姿で土曜も勤務のオジサマ達。 皆それぞれ目的に向かって歩いていく。 地方都市特有の平和な光景…しかし。 そんな人混みの中、風変わりな人物が佇んでいるのが、かじりついた骨つき肉ごしに見えた。 薄汚れた身なりの男。最初は浮浪者かと思った。 ボロボロの外套は解けた包帯の様に風にたなびき、 ダークヒーローのまとったマントの様だ。 立てられた襟元は顔の下半分を覆い隠し、表情は読み取れない。 が、ボサボサの頭髪の合間に見え隠れする眼光は鋭く、 『獲物を探している』 かの印象だった。
/26ページ

最初のコメントを投稿しよう!