勇人と言う男

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 勇人によると、黒木さんは特に『青山桃花』のファンでは無かったらしい。  黒木さんは僕と親しくなって、姉の『吉河紗綾』に近づき、モデル事務所を紹介してもらおうと計画していた。らしい。  女の子って、恐ろしい……。 「それで、僕の仕事って。どんな事をするの……?」  聞くのは怖かったけど、聞かずにいる方が、後でもっと怖い。それに仕事なら、それなりの覚悟だって、しておかないと……。 「大丈夫、大丈夫。あの(・・)紗綾ちゃんが決めた事だぞ?」  だから僕は、心配なんだよね。 「素顔と本名はもちろん、紗綾ちゃんの弟だってことも、ちゃんと隠すってさ。蓮は『青山桃花』に憧れる、ジェンダーレスなキャラで売っていくんだって」  ジェンダーレスか。確かに最近、よく聞くようになったな。詳しい意味は、よく知らないけど。 「じゃあ、やっぱり……。女の子の格好とか、するのかな?」  前に姉の部屋で着たみたいな、あんな格好をさせられるのか。嫌だな。あの格好を人に見られるのかと思うと、恥ずかしさで顔から火が出そう。  友達として、勇人にひとつ確認しておきたい事がある。 「勇人。もし僕が、女装しても……。友達で、居てくれる?」 「そんなの、当たり前だろ」  勇人、ありがとう……。女装は恥ずかしいけど、勇人みたいな友達が居てくれて、本当に良かった。 「蓮が女装したって、紗綾ちゃんの弟だって事実は変わらないからな!」  そうだよね。やっぱり僕、お姉ちゃんに振り回されるんだね。
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