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学校から帰ると、玄関に見慣れない靴があった。母の物とも、姉の物とも違う女性用の靴が一足。
たぶん、姉が友達を連れて来たのだろう。姉は社交的な性格なので、よくあることだ。
玄関を上がってすぐ、階段の前の廊下で、姉と姉の友達にばったり会った。姉と制服が同じなので、学校の友達なのかもしれない。
姉の友達は、モデルみたいだ。すらりと伸びた長い手足に、ピンと伸びた背筋。立ち姿が様になっている。しかも、ものすごい美人だ。
高校生になって少しずつ異性に興味を持ち始めた僕は、ドキドキしてしまう。
「あの、初めまして」
姉の友達だし。失礼のない様にしないと……。
「初めましてー。青山桃花です!かわいい子ねー。紗綾の妹ちゃん?」
「いえ、僕は……」
時折、間違われるけど。僕は正真正銘の男だ。しかも今、制服姿なのに。……同じ高校の。
「あー、その子は蓮。気い使わなくて良いよ。弟だし」
そう、だけどさ。女の子と間違えたこと、謝ってくれても良いんじゃない?
「あー。そうなの?よろしくー、蓮」
あれ?なんか、さっきと態度が違うような気がする……。
「ごめんねー。あたしハーフだからさ。キツいイメージあって。いっつも、かわいこぶってんだよねー」
……そうかな?
さっきの方が、トゲみたいなものを感じたんだけど。
桃花さんの目は、パッチリしていて猫みたいだ。緩くウェーブのかかった明るい色の髪も、僕は可愛らしいと思う。
「僕は桃花さんのこと、可愛いと思いますよ」
桃花さんは少し驚いて「ありがとう」と答えた。
姉はなぜか、ため息をついていたけれど。
「蓮って、おもしろいねー。今から一緒に勉強しない?」
聞かれて僕は、返事に困る。勉強は、得意な方じゃない。
「教えてあげるわよ」
姉にまで、そう言われると僕は「はい」としか言えなかった。
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