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姉の仕事も人気も、よく知らないけれど。高校生になってからよく「紗綾の弟?」と聞かれるようになった。雑誌の読者モデルというのは、女の子のカリスマらしい。
今日も、また──。
「おはよう、吉河くん」
「おはよう、黒木さん」
黒木優歌さんは、クラス一の秀才。腰まで伸びた黒髪が印象的な美人だ。そんな女子が話しかけてきた。
「吉河くんって──」
秀才の彼女が落ちこぼれの僕に声をかけるなら、理由は1つしかない。「うん、弟だよ」と答える準備をしていたら……。
「青山桃花さんの、友達なの?」
意外な事を聞かれた。
そういえば、桃花さんは「ベリーズ」の人気モデルらしい。女の子は本当に、物知りだ。
「姉の友達だよ」
……嘘じゃない。僕は昨日、偶然会っただけ。たまたま一緒に勉強したけど、友達じゃない。
「そうなんだね。わたし、憧れてるの。桃花さんに…」
黒木さんは、ニッコリと上目使いで微笑む。
その笑顔はとても魅力的だった。もし聞かれたのが自分の事だったら、誤解してしまいそうなくらいに。
「そうなんだ。有名人なんだね」
「うん。女の子で、知らない子はいないよ?」
そうなんだ。僕は男だから、知らなかったな。
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