22人が本棚に入れています
本棚に追加
勇人によると、黒木さんは特に『青山桃花』のファンでは無かったらしい。
黒木さんは僕と親しくなって、姉の『吉河紗綾』に近づき、モデル事務所を紹介してもらおうと計画していた。らしい。
女の子って、恐ろしい……。
「それで、僕の仕事って。どんな事をするの……?」
聞くのは怖かったけど、聞かずにいる方が、後でもっと怖い。それに仕事なら、それなりの覚悟だって、しておかないと……。
「大丈夫、大丈夫。あの紗綾ちゃんが決めた事だぞ?」
だから僕は、心配なんだよね。
「素顔と本名はもちろん、紗綾ちゃんの弟だってことも、ちゃんと隠すってさ。蓮は『青山桃花』に憧れる、ジェンダーレスなキャラで売っていくんだって」
ジェンダーレスか。確かに最近、よく聞くようになったな。詳しい意味は、よく知らないけど。
「じゃあ、やっぱり……。女の子の格好とか、するのかな?」
前に姉の部屋で着たみたいな、あんな格好をさせられるのか。嫌だな。あの格好を人に見られるのかと思うと、恥ずかしさで顔から火が出そう。
友達として、勇人にひとつ確認しておきたい事がある。
「勇人。もし僕が、女装しても……。友達で、居てくれる?」
「そんなの、当たり前だろ」
勇人、ありがとう……。女装は恥ずかしいけど、勇人みたいな友達が居てくれて、本当に良かった。
「蓮が女装したって、紗綾ちゃんの弟だって事実は変わらないからな!」
そうだよね。やっぱり僕、お姉ちゃんに振り回されるんだね。
最初のコメントを投稿しよう!