呼び出し

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 四階に上がりエレベーターを降りるとすぐ、警備員が居た。 「ベリーズ」と看板がある。どうやらここは、姉の仕事場のようだ。警備員に声をかける。僕が姉の名前を告げると、中にある部屋まで案内すると言ってくれた。 「わざわざ、お迎えが来るんだって!」 「良いなー。人気モデルはー」  途中、女の子達の会話が聞こえてきた。何となく見付かってはいけない気がしたので、聞こえないふりをして、通りすぎた。  案内されたのは、六畳ほどのテーブルと椅子しかない部屋。そこに、姉と桃花さんが居た。桃花さんは、青い顔をして椅子に座っている。 「お姉ちゃん。桃花さん、具合が悪いの?」 「そうなの。蓮、悪いんだけど、桃花を家まで送ってくれない?」 「それは、いいけど……」  でも、なんで僕が? 昨日会ったばかりで、桃花さんの家も、知らないのに。 「桃花にとって今は、大事な時期なの。あんまり、大事(おおごと)にしたくなくて……」  それはつまり。僕に、コッソリ桃花さんを連れて帰れってこと? どこに? 「僕、桃花さんの家、知らないよ?」 「わたし達の家でいい。お母さんには、知らせてあるから。蓮は桃花と、タクシーで先に帰っててくれない?」  タクシーなら、人に見られず帰れそうだな。 「はい」と姉に、一万円札を手渡される。こんなに要らない。近くだし。 「残りは、あげるから」 「え!?」  桃花さんを家まで連れて行くだけで、そんなに?  少し、怖くなる。これ、誘拐とかじゃないよね? 「貸して」  姉が僕のパーカーを取り上げる。そして、自分の着ていた派手な上着を僕に押しつけた。 「なに?どういうこと?」  僕には姉の行動の意味が、全くわからない。 「桃花と男が二人で歩いてたら、まずいでしょ!」  じゃあ、なんで呼ばれたの?僕。
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