22人が本棚に入れています
本棚に追加
四階に上がりエレベーターを降りるとすぐ、警備員が居た。
「ベリーズ」と看板がある。どうやらここは、姉の仕事場のようだ。警備員に声をかける。僕が姉の名前を告げると、中にある部屋まで案内すると言ってくれた。
「わざわざ、お迎えが来るんだって!」
「良いなー。人気モデルはー」
途中、女の子達の会話が聞こえてきた。何となく見付かってはいけない気がしたので、聞こえないふりをして、通りすぎた。
案内されたのは、六畳ほどのテーブルと椅子しかない部屋。そこに、姉と桃花さんが居た。桃花さんは、青い顔をして椅子に座っている。
「お姉ちゃん。桃花さん、具合が悪いの?」
「そうなの。蓮、悪いんだけど、桃花を家まで送ってくれない?」
「それは、いいけど……」
でも、なんで僕が? 昨日会ったばかりで、桃花さんの家も、知らないのに。
「桃花にとって今は、大事な時期なの。あんまり、大事にしたくなくて……」
それはつまり。僕に、コッソリ桃花さんを連れて帰れってこと? どこに?
「僕、桃花さんの家、知らないよ?」
「わたし達の家でいい。お母さんには、知らせてあるから。蓮は桃花と、タクシーで先に帰っててくれない?」
タクシーなら、人に見られず帰れそうだな。
「はい」と姉に、一万円札を手渡される。こんなに要らない。近くだし。
「残りは、あげるから」
「え!?」
桃花さんを家まで連れて行くだけで、そんなに?
少し、怖くなる。これ、誘拐とかじゃないよね?
「貸して」
姉が僕のパーカーを取り上げる。そして、自分の着ていた派手な上着を僕に押しつけた。
「なに?どういうこと?」
僕には姉の行動の意味が、全くわからない。
「桃花と男が二人で歩いてたら、まずいでしょ!」
じゃあ、なんで呼ばれたの?僕。
最初のコメントを投稿しよう!