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そんなの――
「気にしてないよ!そりゃ、多少へこんだりするけど、全然――」
「僕が!」
私の言葉を遮るように、唯織くんは少し大きな声を上げた。
それから、少し顔を歪めて、言葉を続ける。
「僕が、気にするんだよ。風邪とかそんな理由で、毎回美桜のこと悲しませて、待たせて、美桜が平気だって言えば言うほどツラいんだ。美桜の楽しみにしてた時間を、今まで奪ったことも、これから奪うかもしれないことも、僕が耐えられない」
何も言い返せなかった。
私がいくら平気でも、唯織くんが平気じゃないんだったら、ここで引き留めるのは、唯織くんに嫌な思いをさせてしまう。
「なんかさ――」
言いかけて、私は口をつぐんだ。
「何?」
「ううん、何でもない」
人生半分を交換とか、プロポーズ級に本気とか。
初恋だから、私が嫌いになるまで私のことを好きだとか。
唯織くんが言ってくれた言葉を、信じてた。
でも、結局こういう理由で終わってしまうんだね。
言いかけてやめたのは、これを言ったら唯織くんを困らせるって気づいたから。
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