*13* 風穴

1/10
前へ
/368ページ
次へ

*13* 風穴

花火大会の翌日から、夏休みが明けるまで、私は抜け殻みたいに空虚なまま、日々を過ごした。 別れるって決めてたんだったら、どうして最後にキスなんかしたの? 忘れたくったって、忘れられないじゃん――。 花火大会の時のことを思い出しては、視界が涙で滲む。 じゃあ、あの時キスされなかったら、忘れられてた? ちゃんと過去にできてた? ……忘れられないのは、キスのせいじゃないって、わかってる。 毎日同じことを考えて、否定して、思考を止める。 ただそれを繰り返していた。 唯織くんのことを忘れられないのは、たくさんの思い出と ――私のこと、もう好きじゃないの? ――好きだよ。 あのやり取りのせいだ。 好きなら、一緒にいてくれたらいいのに。 私の為なんて、綺麗ごと言わないでよ。
/368ページ

最初のコメントを投稿しよう!

254人が本棚に入れています
本棚に追加