*14* 小さな後悔

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*14* 小さな後悔

高校3年生の頃の記憶は、正直あまりない。 ただ、唯織くんの嫌なところをずっと考えていた。 きっと(はた)から見た私は、暗い顔をしていたに違いない。 毎日毎日、唯織くんの嫌いなところを必死に考えて、それ以外を考えないようにしていた。 だって、もしを考えてしまったら、また好きな気持ちが蘇ってしまうから。 唯織くんを嫌いになろう。フラれたんだから、嫌いにならなくちゃ。 私は、唯織くんを嫌いになるために、ほとんどない嫌いなところを懸命に毎日考えていたのだ。 そうして、自分の中の好きという気持ちを、押しつぶして押しつぶして、嫌いに変えようとしていた。 3年生の時の出来事で、ひとつ印象に残っていることがある。 それは、唯織くんが亡くなる前日のこと。 ――会いたい。 1通のRINEが届いた。 送信者は、唯織くんだった。 唯織くんのことを嫌いになろうとしていた私は、それを無視してしまった。 トークを開いたら―― もし返事をしてしまったら―― 今まで、必死に押しつぶしてきた気持ちが蘇ってしまう。 また、大好きに戻ってしまう。
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