0人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
ぼくは歩く、森の中
ぼくは歩く。春の森を。
ひらひらと頭上を舞い散るのは薄桃色の小さな花びら。
わあ、なんてきれいなんだろう!
思わずぼくは足を止めてしまう。
「止まっちゃだめだよ」
声がして、ポンと肩を叩かれる。
周りを見渡すと、いつのまにか知らない木たちに囲まれていた。
ここはどこ?まったく知らない場所へ来てしまったようだ。
いつの間にか近くを歩いていたはずの仲間も見当たらない。
みんな、どこへ行ってしまったの?
不安で不安でたまらない。
ぼくの足はもうそこから一歩も動けない。
「もう止まっちゃうの?」
さっきの声がまた聞こえる。
うつむいてしまった顔を上げると、そこには大きく見事な桜の木。
「せっかくまだ歩き始めたばかりなのに」
再び周りの森も動き出す。
そうだ、ぼくも歩き出さないと。
ぼくは歩く。
知らない春の森を。
新たな出会いと別れを過ぎて、森を歩いていく。
まだまだ先は長いみたいだ。
最初のコメントを投稿しよう!