ぼくは歩く、森の中

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ぼくは歩く、森の中

ぼくは歩く。春の森を。 ひらひらと頭上を舞い散るのは薄桃色の小さな花びら。 わあ、なんてきれいなんだろう! 思わずぼくは足を止めてしまう。 「止まっちゃだめだよ」 声がして、ポンと肩を叩かれる。 周りを見渡すと、いつのまにか知らない木たちに囲まれていた。 ここはどこ?まったく知らない場所へ来てしまったようだ。 いつの間にか近くを歩いていたはずの仲間も見当たらない。 みんな、どこへ行ってしまったの? 不安で不安でたまらない。 ぼくの足はもうそこから一歩も動けない。 「もう止まっちゃうの?」 さっきの声がまた聞こえる。 うつむいてしまった顔を上げると、そこには大きく見事な桜の木。 「せっかくまだ歩き始めたばかりなのに」 再び周りの森も動き出す。 そうだ、ぼくも歩き出さないと。 ぼくは歩く。 知らない春の森を。 新たな出会いと別れを過ぎて、森を歩いていく。 まだまだ先は長いみたいだ。
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