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モフモフ
「ひぃ~~、いい加減助けてくれ~」
「供に生きる為だ、頑張れ」
「ごめんって、マジでごめんなさい!!」
「皆可愛いじゃないか。慣れろ」
自称対人恐怖症の引きこもり気味の弟を連れ出して来たのはアルパカ牧場。
弟は今、100頭のアルパカの群れに囲まれ埋もれている。
弟が何故、自称対人恐怖症になったかは分からないが何となくイジメが原因ではないかと思っている。
しかし、いつまでも部屋に引きこもってネットゲーム三昧はコチラが困る。
精神科に連れて行こうにも、「ひとごみ怖い」とかタクシーをねだったり。
うちに余裕があるなら毎度送迎にタクシーを使ってもかまわないが、そうではない。
「スクランブル交差点に連れて行かなかっただけでも感謝しろ。」
この治療は荒療治である。
うちは田舎の住宅街だから、病院や大きなデパートに行くには必ず駅に行かないとならない。
そして、駅はいつだって混む。
今日はひとごみに慣れさせるため、人の代わりにアルパカを使った。
モフモフの中、舐められたり、髪の毛を甘噛みされている弟は元気に悲鳴をあげている。
部屋の薄暗い中、下を向いてゲームをしているよりはよっぽど健康的である。
「お前に残された道は、人間社会に戻るか、ここに残るかの二択だ!」
別に病気(?)が治るまで人よりアルパカが多いこの牧場の手伝いをしてもいい。
動物は人の心を癒すからな。
あとは、社会に復帰するかだ。
ニートは絶対許さん!
人生の荒波に揉まれている弟を俺は見守っていく、これからも。
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