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一
ジョーイがまた家出した。
ジョーイ! 愛しのジョーイ!
「どこ? ジョーイ! ジョーイ!」
呼んでも当然返事はない。
リビングに飾ってある写真立てを見た。私とジョーイが写っている。
私はジョーイを抱っこして満面の笑みを浮かべている。ジョーイは無表情だ。
「ジョーイ、どこに行ったの……」
悲しい……。
「いつものおまじないをしたら?」
台所で夕食の支度をしている母に言われた。
「ジョーイー!」
「もういないわよ。猫だからすばしっこいのよ」
母に言われて、それはそうだと妙に納得した。
茶色くてふわふわと長い毛並みのジョーイ。我が家の愛猫ジョーイ。
ジョーイには家出癖があるのだ。
夕食前で母は支度にかかりきり、私もシャワーを浴びたりしていて、目を離したすきに出て行ったらしい。
「もう、本当にジョーイったら……」
思わずひとりごとが出た。でも言ってもしょうがないかとすぐに思いなおした。
「えっと、紙、紙……」
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