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結局進路希望調査は手元に戻ってくることになった。
一応提出したものの、ふざけて書いてるのはお前だけだぞ、というまさかの裏切りを伝えられて私の手に収まっている。
マジか。みんな真面目すぎる。
この時期に決めてるとか将来有望じゃん。
とかふざけているのも私だけかもしれない。
…だけど、ひとりだけ例外もいると思う。
「きょーうーっ」
昼休みの間を狙って、屋上のちょうど日陰がある場所に顔が出す。
「何してんの。弓(ゆみ)」
予想通りの男が怪訝そうな表情を浮かべて、どう見ても似合わないイチゴオレをストローで吸っていた。
似合わないなぁ、相変わらず。そう思いながら匤也(きょうや)の仏頂面の前に仁王立ちをする。
ジッと私を凝視する匤也、やっぱり手のひらに握られているピンクの紙パックがなんともミスマッチだ。
「進路希望調査、見せてほしいんだけど」
「ハァ? いきなりなんだよ」
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