恭しくハニー

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相変わらず照れ屋だなぁ、もう。なんて口を尖らせるけれど、私たちの距離はこれ以上言いようがないと思う。 ただ単に、中学の頃、通っていた塾が同じで。 同じ学校じゃなかったけれどなんとなく馬が合うし、わりと心地よくて、受験した高校が同じだったことには驚いてた。 ただそれだけカンケイであって、それ以上でも以下でもないし。でもやっぱり、どちらかというと “ 以上 ” なのかもしれない。 やけに整った顔には到底似合わない不貞腐れた表情でキャンディの包みを開ける匤也。 甘そうな匂いに手を差し出すと、理解したように同じ味のキャンディをひとつ、私の手のひらに置いてくれる。 「あまっ、」 パステルカラーの包装紙から淡い色の丸っこい塊を取り出した。 口に入れた瞬間、甘さがじわりと広がる。 「文句言うなら返せ」 「言ってないじゃん」 甘くて、でもどこかさっぱりとしつこくない味。この季節にはぴったりだった。
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