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大人たちから手の付けられないいたずら者と睨まれているカザトと違い、ミクリは比較的にせよ物静かな少年だ。このように蛍を集める誘いにも応じるし、祭りのときなどは町の子どもたちの大騒ぎにも加わるが、普段はどちらかというと、一人で本を読んでいる方が性に合う。
そのミクリが自分から掟破りをしたがるなどとはどういう風の吹き回しだ、と不思議になったのだろう。
「星を見る」
周りに聞こえないように小声で明かすが、カザトはますます不思議そうな顔になる。
「わざわざそんなことしなくても、星なんて夜になればいくらでも見られるだろ」
「ただの星じゃないんだ」
遅い夏の夕日は、つい今しがた川の対岸に沈んだばかりだ。コバルト色に染まった南の空には銀の竪琴のような半月が輝いている。
「今夜は、流星群が見られるんだよ」
ミクリの父親はここから少し離れた街の大学で研究する科学者だ。その大学から毎年送られてくる分厚い天文年鑑は、ミクリの愛読書でもある。
「真夜中を過ぎた頃に東の空に昇る星座の近くで、次々と星が降るんだって。今年の夏は特に流星の数が多いと予想されているらしいよ」
星の暦のページでその説明を読んでからというもの、ミクリは頭に思い描いたその光景にすっかり魅了されてしまっていた。
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