Liar and liar

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 そう考えると、やはり『モテる』タイプは可愛い系なんだろうと思う。  しかし……達実はとっくに奏の身長を追い抜き、現在は180cmまで伸びている。  奏の隣に立つと、尚更(なおさら)小柄とは言えなくなる。  長身の美丈夫という言葉がピッタリだ。  そのせいか『可愛い』なんて、先の三人以外に言われた事など無い。 (綺麗とか美しいとか言われるのはしょっちゅうだけど、でも、だからってそれで告白された事なんて無いしな……)  そう考えると、やはり自分は『モテない』タイプらしい。  お高く留まっている、鼻持ちならない嫌なヤツだと思われているのだろう。  こうも頻繁に相手に委縮されるのだから、よっぱど酷薄(こくはく)に見えるに違いない。 (なんか、僕って本当に人に嫌われるタイプなんだな)  達実はそう自分の事を分析すると、憂鬱になって溜め息をついた。  誰かに意地悪したことも悪口を言った事も無いのに、一方的に嫌われて敬遠されるのは正直辛い。(母親)に近寄る害虫なら何度も邪魔した事はあったが……。 ――――じつは達実本人は気付いていなかったが、彼は宝石のように輝く美貌であった為に、男も女も並の相手は気後れして(・・・・・)声を掛ける事が出来ないでいるのが真相であった。  それは、達実と種族を同じくするアルファであっても、同様である。  いつも遠巻きで、彼等は羨望と憧憬の眼差しで達実を見つめている。  麗しく美しい、大輪の薔薇と讃えられる綺麗な達実を。 ――――しかし達実は、そんな事には全く気付いていない。  彼はかれで、母である奏を守ろうといつも必死であり、自分に向けられる他人の眼には無頓着に育ったのだ。  そして奏だけを見つめてすくすくと育った達実は、完全に奏の事を『理想の恋人像』だと信じている。  だから、奏のように華奢で可愛らしいタイプこそが愛される(・・・・)人物像なのだと完全に思い込んでいた。
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