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「どうなさいました、結城さま? お身体の調子が芳しくないのですか? 」
「ん? 何でそう思うんだ? 」
「も、申し訳ありません! 出過ぎたことを……」
コンシェルジュは達実の不機嫌な視線を受けて、平身低頭謝り出した。
これに、達実はまた嘆息する。
(なんだよ――――そんなに僕は扱いにくいアルファのように見えるっていうのか? )
自分よりも、ずっと年上の相手にこうして何度も頭を下げられるのは、正直気が滅入る。
達実は別に、貴族のように誰かに傅かれて育ったワケではない。
彼の母である奏は、誰に対しても分け隔てなく公平に接するよう、達実を正しく教育したのだ。
だから達実は、幼い頃から伸び伸びと闊達に成長したが、年長者には礼儀をはらい逆に年下には優しく接する青年へと育った。
前時代のアルファ達のように、気位ばかり高くて他人との調和も出来ないような人間ではない。海外では、オメガもベータも関係なく、誰とでもフランクだ。
なのに、日本に来るたびに、何故か日本人にはこうして気を遣われる。
それが、達実は気鬱だった。
「――べつに怒ってないよ。そんなに、僕相手にヘコヘコ頭を下げなくていいって」
そう言いながら、達実は先程のオメガを思い出す。
あのオメガも、このコンシェルジュ同様、達実に対して委縮した様子だったが――――それに負けずに、なんと敵意を向けてきた。
線が細くて可愛いタイプだったが、見た目と中身は違うらしい。
しかし、甘いお菓子のようなオメガフェロモンを醸していて、全体的にピンク色のオーラに包まれているような青年であり……きっと、アルファやベータの多くの雄たちは、ああいったタイプを好むのだろうと思う。
――――それに対して自分は、全く可愛くないタイプだと自覚している達実である。
この世で、達実のことを可愛いと言って大切に慈しんでくれたのは、実母である結城奏と義父である九条凛と――――そして、アメリカにいる幼馴染の友人の三人だけだ。
(采も、やっぱり好みのタイプは……ああいった小柄な、如何にもオメガっていう感じの可愛いタイプなのかな)
母の奏も、小柄でキュートで可愛いオメガだ。行く先々で、男共が求愛して来るほどに。
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