start

3/4
411人が本棚に入れています
本棚に追加
/224ページ
 唯一味方になってくれそうだった恵美叔母さんも、思ったより力になってもらえず、とうとうオレは渋々ではあるが承諾したのだ。  親父の、再婚を。  それでは、あいつ(・・・)は親父と七海達樹の子供なのかといったら――――それは違う。  あいつは、確かに七海達樹の子供だが……母親は七海達樹ではなく、結城奏というオメガだった。  つまり、七海はオメガでありながら、同じくオメガである結城奏と契って(あいつ)を儲けた訳である。 (――――裏切りだ、乗っ取りだ! 九条の血は一滴も流れていないではないか! )  そんなオレの声は、一切が黙殺された。  七海は……あいつが産まれる前に、この世を去ってしまったからだ。 ――――七海は、身体を壊して長くは生きられぬ運命のオメガだった。  その七海が、独り残される親父の為にと、苦肉の策で後輩のオメガ(結城 奏)との間に子を儲けたらしい。  命を捧げた純愛を前に、オレの抗議の声も自然と萎んだ。 …………それから、18年が経った。  親父が車の事故で不慮の死を遂げ、遺産相続の話が急に持ち上がったのだ。  法律に従い、遺産分割協議書やら何やらを急遽話し合わねばならなくなった。  滅多に会わないようにしていたあいつと――――結城達実(ゆうきたつみ)と、何がなんでも会わなければならない状況になったワケだ。 「おい」 「……なんだ? 」 「つまり僕は、ダディの遺産を相続する権利があるって理由だけで、日本に呼び出されたのか? 」  達実の不満そうな声音に、カチンと来る。 「なんだよ! オレだってお前なんか呼びたくなかったよ! 」
/224ページ

最初のコメントを投稿しよう!