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唯一味方になってくれそうだった恵美叔母さんも、思ったより力になってもらえず、とうとうオレは渋々ではあるが承諾したのだ。
親父の、再婚を。
それでは、あいつは親父と七海達樹の子供なのかといったら――――それは違う。
あいつは、確かに七海達樹の子供だが……母親は七海達樹ではなく、結城奏というオメガだった。
つまり、七海はオメガでありながら、同じくオメガである結城奏と契って子を儲けた訳である。
(――――裏切りだ、乗っ取りだ! 九条の血は一滴も流れていないではないか! )
そんなオレの声は、一切が黙殺された。
七海は……あいつが産まれる前に、この世を去ってしまったからだ。
――――七海は、身体を壊して長くは生きられぬ運命のオメガだった。
その七海が、独り残される親父の為にと、苦肉の策で後輩のオメガとの間に子を儲けたらしい。
命を捧げた純愛を前に、オレの抗議の声も自然と萎んだ。
…………それから、18年が経った。
親父が車の事故で不慮の死を遂げ、遺産相続の話が急に持ち上がったのだ。
法律に従い、遺産分割協議書やら何やらを急遽話し合わねばならなくなった。
滅多に会わないようにしていたあいつと――――結城達実と、何がなんでも会わなければならない状況になったワケだ。
「おい」
「……なんだ? 」
「つまり僕は、ダディの遺産を相続する権利があるって理由だけで、日本に呼び出されたのか? 」
達実の不満そうな声音に、カチンと来る。
「なんだよ! オレだってお前なんか呼びたくなかったよ! 」
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