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 つい大声でそう言い返すと、すかさず反論が返って来た。 「……42にもなって、何を騒いでんだか」  達実は皮肉気に言うと、フンと鼻で笑った。 「僕は、奏の事が心配で、一瞬たりとも傍を離れたくなかったんだ。それを、何やら重大な事があるから日本に帰国しろなんて頭ごなしに命令されて――――迷惑千万だよ」  本当にうんざりしたように言うと、達実はキッと睨んできた。  その鋭い視線を受けて、場違いにも思わずゾクリとする。  オレは、こいつは嫌いだが……その美しさは認めざるを得ない。  達実の父親である七海達樹というオメガは、本当に美しかった。  母親の結城奏は撫子のように可憐な青年だったが――――達実は、艶やかな薔薇の花と讃えられた父親(七海達樹)の血の方が、間違いなく濃く表れている。  綺麗な瞳に棘を滲ませ、達実はオレを睨み付ける。 「何だよ? 正論過ぎて言葉が見付からないのか? 」 「う……」 「第一、僕は、お前が嫌いなんだ」 「――」 「だからもう、ダディもいないこんな家なんか来たくなかったのに……本当に不愉快だよ! 」  そのセリフが、胸に突き刺さる。  オレは咄嗟に、手を振り上げていた。  パンッ!  鋭い音が鳴ったが、間髪入れずにオレの腹にも衝撃が襲った。 「うっ……」  思わず腹を押さえて(うずくま)ったところ、トドメとばかりに後頭部を強打された。 「僕を殴ったんだから、こんなもんで済むと思うなよ! 」  ダメージは明らかにオレの方が大きいのに、達実は、自分こそが被害者のように言い放ったのだった。
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