My important friend

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 手を振る達実を視認すると、相手も喜びを爆発させたようにブンブンと手を振って応えた。  達実のことを『愛しい恋人(sweetheart)』と言ったその人物は、周りの人間を押しやるように大きなトランクをガラガラと転がしながら、弾けるような笑顔で達実へと歩み寄って来る。  肩までの金髪はキラキラと輝き、その瞳は空を映したかのような見事なスカイ・ブルーだ。  身長は180の達実より更に高く190はあり、一見するとスラッとした中肉体形に見えるが、その実、そのボディーはボクシングでしっかりと鍛え上げられており、鋼のような硬い筋肉に覆われている。  だがしかし、彼は貴族(ブルーブラッド)のような厳かな気品も確かに持ち合わせており、野獣のような猛々しさというよりは王侯貴族の風格を誇る美丈夫であった。  一目見て、誰もが、彼は只者ではないと分かる。  彼の曳くトランクに押されて、一瞬ムッと振り返った人々もいたが、その姿を見るや否や皆が慌てて道を空ける。  だが彼は、それらに礼を言う事も関心を払う事もせずに、当然のように達実へ向かって真っ直ぐに歩いた。
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