My important friend

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 采の本心は、きっとそうだったろう。  アルファ同士が居合わせた場合、反発するのは自然の摂理だ。  本当は、日本に呼び出された時、達実は内心嬉しかった。  采に会う事を思うと、心が躍った。  だが、いざ顔を合わせると……どうしても憎まれ口が飛び出して来る。  それは達実も、采も同じで。  どうあっても、二人仲良く語り合うなんて出来そうもない。 ――――本当は……采に優しく口づけをしてもらって、ギュッと抱きしめてほしいのに。  しかし現実は全く思い通りにならず、こちらから強引に采の唇を奪ったものの、露骨に拒絶されてしまった。 『お前はガキで生意気だし、可愛げも無い。ましてや義理とはいえ弟だ。二十以上も歳の離れた、な』  そう断言した、采の顔が忘れられない。  怒り、困惑、動揺――――そんな負の感情しか受け取る事が出来なかった。  達実のことを、愛しいと……そう思ってくれるような様子はなかった。  その事に、達実は打ちのめされている。 「何で、僕は……アルファなんだろう……」  小さく呟いた達実に、アレンは切ない表情になって手を差し伸べた。 「そんな事を言わないでくれ。私は、君がアルファで良かったと思っているんだから」 「アレン……」 「例えば君がオメガなら、私は力づくで君を囲い込んでいるだろうね。君の意思などお構いなしに。――――でも、君はアルファだ。オメガのように脆弱でもないし、ベータのように凡庸でもない。私と、唯一肩を並べる事が出来る存在だ」  なんとも傲岸不遜な言い方をするが、アレンが言うとそれが当たり前に聞こえる。  アレンはそれだけの威厳を放ちながら、白磁のような達実の頬を両手で覆った。 「君は、誰より美しい。華麗でゴージャスな真紅の薔薇だ。そして、何より可愛いよ」 「アレンは――僕の言ってほしい事が分かるみたいだな」  フフっと微笑むと、達実はその手からスッと逃れた。
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