Worrisome person

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 達実はそう呟くと、本当に悔しそうに唇をかんだ。 ――――大好きな奏と、大好きな凜が夫婦になってくれれば良いのに。  達実は、物心が付いてからずっとそう思っていた。  だから、凜や奏に悪い虫が付かないようにと、ずっと気を張ってガードしていたのに。  だが肝心の凜が、突然この世を去ってしまった。  長年に渡って計画していた事がご破算になり、達実の気分は晴れない。  これでは何の為に、奏に寄せられる男共の求婚を(ことごと)く邪魔してきたのか。全部が無駄な努力に終わってしまった。  このままでは……これ幸いと、再び奏に求婚するあいつら(・・・・)がやって来ないとも限らない。  そう考えると、居ても立ってもいられなくなる。 「よし、急いで飛行機を予約しよう」  達実はそう決意すると、ポケットからスマホを取り出すが――――。 「おい、達実! 」 「っ! 」 「あと二週間は、日本に居ろよ。親父の法要もあるし、他にも色々手続きがあるんだからな」  そう言いながら、横柄な態度で部屋に入ってきた義兄()を、達実は睨み付ける。 「そんなの、ソッチの勝手だろう。僕には大切な役目があるんだ」 「……もしかして、結城奏(母親)のガードか? 」  嘆息しながら、采はソファーへ腰を下ろした。 「あのなぁ、お前が何を考えていたのかこっちも薄々分かってたが――――もう親父はいないんだぜ? 奏と再婚させようなんて目論見は、夢と散ったんだ。もうそろそろ、あの人にも自由に恋愛させてやってもいいんじゃないか? 」 「なにっ!? 」 「お前がずっと邪魔するせいで、全部の縁談がダメになったんだろう? 奏にバレないように男共の妨害をしているって、こっちの耳に入ってるぞ? 中には、オレ(九条家)にお前をどうにかしてくれって泣き付いて来たヤツもいるんだ。いつまでも母親にベッタリするのは止めて、いい加減に親離れしろよな」
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