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花火を見に行くために、気持ち早めにフードブースの片づけを進めていると、
「ねえ、これ誰の?」
一抱えほどある赤いプラスティックのトランクが、ジェラートブースの片隅で見つかった。ジェラート担当者が、
「あっ、それ、もしかして、最後のお客さんの荷物かも」
と記憶を掘り起こす。
「じゃあ、忘れ物ですね。本部に問い合わせ来てないか、確認してきます」
私が預かり、実行委員会本部のテントへ走る。
本部には、康臣しか残っておらず、他の面々は撤収作業や帰っていく人の車の整理に出払ってしまったようだ。残った康臣も、誰かと電話中。
私が赤いトランクを掲げると、
「少々お待ちください」
と電話を保留にする。
「森永さん、じゃない、翼。それ、どこにあったかわかる?」
「ジェラート屋の中」
ありがとう、と電話に戻ったところをみると、通話相手はちょうどトランクの持ち主だったようだ。
「わかりました、何とか届けるようにやってみます」
と言って電話を切った。
「助かったよ。ありがとう!」
と私に向き直る。
「これ、誰が忘れたの?」
尋ねると、はあーっとため息をひとつ。
「花火師さん」
「ええええ?」
ということは、これは……。
「無線の発火装置。一台故障が出て、追加で家族に届けさせた分を会場内に忘れたらしい」
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