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再再会
それから3カ月が過ぎた。
私はまだ同じ会社にいた。
父が心配して何度も辞めてもいいと言ってくれた。
でも私は辞めなかった。
仕事をしてみようと思った。
私も武田くんのように、上杉さんのように真剣に仕事をしてみようと思った。
そしたら何かが見えてくるかもしれない
そう思って仕事を続けていた。
久々に駅の近くの桜並木まで来た。
緑はすっかり濃い緑色になっていた。
そしてベンチに座る男の人を見た。
その人は私を見ると微笑んだ。
「松山さん?」
「お久しぶり!」
松山さんは元気な声でそう言った。
「今日も仕事で?」
私がぎこちなく微笑んでそう聞くと、松山さんは少し照れたように笑った。その胸には見覚えのあるネクタイがしてあった。
「う~ん、仕事もあるけど。お礼がいいたくて」
その言葉に私はなんだか胸がドキドキするのがわかった。
「ここにくれば宮園さんが来るかなと思って。宮園さんが来るのが見えてびっくりしたよ。ここによく来るの?」
松山さんはそう言って笑った。
「ネクタイ。ありがとう。ずっとお礼がいいたかったんだ。会社に行くものあれだし、住所も書いてなかったから」
「そ、それだけのために?」
私が少し乾いた声で言うと、松山さんは慌てた様子を見せた。
「違うよ。取引先の近くだし。商談が終わって時間があったから待ってみたんだ。会えてよかった」
そう言って松山さんは椅子から腰を上げた。
「じゃ、ネクタイ。本当にありがとう」
松山さんは微笑むと私に背を向けた。
「松山さん!」
私は気がつくとそう名前を呼んでいた。
「今日、暇ですか?ご飯一緒に食べませんか?」
「うん。喜んで」
松山さんは振り向くと笑ってそう答えた。その笑顔が眩しく、なぜだが涙が出そうになった。
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