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東京に、武田の会社に彼女が働くようになって数ヶ月がたった。俺は武田に婚約者がいることを知りほっとした。
しかしあの射抜くような視線が気になっていた。
10年前とひとつも変わらない視線。
そして、考え事をすることが多くなってしまった彼女。
俺は不安になった。彼女を束縛したかった。
結婚…俺はそのことを考えることが多くなった。
でも俺は彼女の答えを知っていた。
仕事が好きな彼女、あいつを忘れられない彼女。
俺の子供を生んで家庭に入ってくれるとは思わなかった。
でも俺は言わずにはいられなかった。
髪の色をあいつと同じ色にかえ、彼女はますます苦しそうな顔を浮かべるようになった。
ある日、ベッドで眠る俺の髪を愛しげに撫でていた。髪の主が俺だとわかると一瞬びっくりしたような顔になった。彼女はベッドにもぐりこみ、顔を隠したが、俺にはわかっていた。
でも諦め切れなかった。
彼女が好きだった。
いつから彼女が俺にとって特別な存在になったのかわからない。
でも俺は離したくなかった。
この腕にずっと抱きしめていたかった。
「カナエ…」
ぎゅっと俺は彼女の体を抱きしめた。一瞬体がびくっと震えたが彼女は抵抗しなかった。
俺はその首筋にキスをした。そして彼女の柔らかな胸に掴んだ。彼女は甘い声をあげた。俺は止められなかった。
彼女が好きだった。
離れられなかった。
彼女を解放してやることができなかった。
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