初恋の終わり

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行為が終わった後の彼女は無言でシャワールームに歩いて行った。 俺を責めようともせず、無言だった。 こころなしかその背中が泣いているようだった。 俺は自分が情けなかった。 彼女を苦しめたくないのに、苦しめてる自分が嫌だった。 「松山‥」 ベッドに腰掛けてうつむいている俺に彼女は声をかけた。シャワー上がりの石鹸のさわやかな香りがした。 「ごめん‥」 彼女は俺にそう言った。彼女の目は真っ赤に腫れていた。 ごめんというべきなのは俺だ‥。 俺は彼女を見ていた。自分がどういう表情をしているのかわからなかった。 捨てられた子犬のような顔をしてるのだろうか‥ 「松山‥本当にごめん。今ままでずっと側にいてくれたのに」 彼女はぽろぽろと涙を流して続けた。 初めて見た涙だった。 俺のために泣いている? 「私はここでは生きていけない。新しい土地でやり直したいんだ」 俺は黙って彼女の言葉を聞いていた。 彼女は憔悴しきっていた。 いつの間にこんなに痩せたんだろう。 東京にきてから彼女はこんなに華奢になってしまった。 「俺ならお前をずっと守ってやれるのに」 俺の言葉に彼女は何も答えなかった。 わかっていた。 彼女は逃げたいんだ。 すべてのことから。 俺から、あいつから‥ 俺は彼女を抱きしめた。 涙が出てきた。 「カナエ‥わかった。わかったよ。今までごめん。好きだった。ずっと好きだった。」 俺は馬鹿みたいにそう繰り返した。 胸がえぐられるようだった。 でも、俺は彼女を本当に好きだった。 彼女をこれ以上苦しめたくなかった。
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