恋が終わるとき

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桜が雪のように舞っていた。 雨ばかり続いていて桜の花びらが優雅に舞う姿が数日見れず、 このまま花見をせず桜が散ってしまうのかと思っていたけど とうとう見えて私はほっとした。 桜の花びらが舞う中、わたしは一人の男の人をみた。 茶色のふわふわとした髪をなびかせ、その人は桜の花を眩しそうに見ていた。 あれは確か武田くんだ。 こんなところで何してるんだろう? それにしても男の人なのにやっぱりきれいな顔… 入社した時からそう思ってたけど。 「ユキコ?」 側にいたマイが不思議そうに私を呼んだ。 「早くしないと間に合わないわよ」 マイは私の腕を取ると駅に急いだ。 あれ? 再度桜並木を見たら、武田くんの姿は消えていた。 「宮園さん?」 ふとぼんやりをパソコンを見てるとそんな声がした。ふと見ると側に武田くんがいた。私は顔が赤くなるのがわかった。 本当すごくきれいな顔してる。 武田くんは見られてるのになれてるらしく、私の視線に微笑み返した。 「これ、宮園課長に頼まれたもの。今日は一人で帰るようにって言ってたよ」 父さんったらこんな伝言まで武田くんに頼まなくても! 私は顔がさらに赤くなるのがわかった。 「気をつけて帰ってね。」 武田くんは微笑みを浮かべたまま、私の肩を軽く叩くと部屋を出て行った。 武田タカオくんか… 私は武田くんの後姿が見えなくなるまで見つめていた。 「た、武田くん!?」 玄関のベルが鳴って急いで見に行くと、顔を真っ赤にした父さんに肩を貸した武田くんが立っていた。 「すまんなあ。武田くん。」 父さんは上機嫌でそう言うと武田くんの肩をたたいて、千鳥足で家に上がった。 「まあ、あなた!」 キッチンから出てきたお母さんがお父さんに声をかけるのがわかった。 「ありがとう。送ってくれて」 私がそう言うと武田くんは微笑んだ。 「相当飲んでたから、後で水をあげたほうがいいよ。それじゃあ」 武田くんはそれだけ言うと私に背を向けた。 「あ、武田くん!」 気がつくと私はそう呼びかけていた。 「何?」 武田くんは振り向いてそう答えた。そのきれいな顔に見つめられて私は胸がどきどきするのがわかった。 「あの、昨日、駅前の桜並木にいたでしょ」 馬鹿なことを聞いた。 自分でもなぜそんなことを聞いたのはわからなかった。 「ああ、見てた?」 武田くんはあきれる様子もなく笑った。その笑顔がいつもと違うように見えた。 「きれいな桜だったから見とれてしまったんだ。」 武田くんはその目を細くしてそう言った。その顔がとてもせつなく私はうかつにも見とれてしまった。 武田くんはそんな私を見つめた。 「今度一緒に桜見に行く?」 私は武田くんの言葉が信じられなかった。でも体は頭よりも早く動いていた。 「うん」 気がつくと私はそう答えていた。
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