人ごみの中へ

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人ごみの中へ

(あー、マジきもかったわ。なんか、ヌルッとするし、くっさいし) (まあ、たったこれだけで二万なら、安いもんだろ。さ、持ってけ) (サンキュー。んじゃ、お疲れ~) 男女の話し声が聞こえた。 「あ、どういうことだ?」 オレは目隠しをはずそうとした。 「な、何だ? はずれないぞ」 「はっ。ムダだよ、この鍵がない限り。剥がそうとすれば、顔の皮膚が半分めくれるからな」 いま気がついたのだが、このトラックの中に、何人かの人間がいる気配がする。 「誰だ、お前は!」 「警察だよ。お前は、人ごみ法違反で逮捕されたんだよ」 声の主は、そう言いながら、オレの両手に手錠を掛けた。 「! 何すんだ! こんな事したら、パパが黙ってないぞ!」 「あー、その心配はないわ。お前の父親が、依頼人だからな」
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