長條さん

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「月島さん、おはよう」 「おはよう坂田さん、神宮さんもおはよう」 「おはよう」 春は肩までかかった髪を色っぽくかきあげて、チラリと凜を一瞥した。 「転校ってのはいいものよね、新しい環境に身を置けるし」 「そうだね」 「友達も作れるしいいことばっかり」 春が馬鹿にしたように笑うと、宏美の眉間の皺が濃くなった。 「何か用があるの?月島さん」 「今日も安城(あんじょう)先生来ないんだって」 「今日も?…わかった、ありがとう」 「別にいいわよ、お礼なんて」 それだけ言って春は自分の教室に戻っていった。 「じゃあ私も戻るね」 宏美も踵を返して戻ろうとした。 岬はその背に声をかける。 「宏美」 「なに?」 「顔に出てたよ」 「うるさいよ」 宏美は眉間に皺を寄せて教室を出た。 それを見て岬はクスクスと笑った。
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