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「お疲れさまです」
岬はそう言って部室のドアを開けた。
春にボールをぶつけた百合と春一派との間でひと悶着あったが、宏美の「わざとじゃないんだから」という説得でなんとか収まった。
岬は少し急ぎ足で校門を出る。
岬は凜を追っているのだ、父に言われた「仲良くしてやれよ」との言葉と宏美のために。
それに岬自身もなんだか彼女も独りにしていると、わざとハブっているようでいささか気分も悪い。
なんとか普通のコミュニケーションくらいはほかの部員と取ってくれればいいなと期待を抱きつつ凜の姿を探す。
彼女と一緒に出られればよかったのだが、それでは春になんて言われるかわからない。
平然を装っていたが、春の自尊心は傷つけられて怒りがその眼に宿っていたのは明らかだった。
岬はまたわけのわからない絡まれ方をされるのは嫌だったのだ。
「あ、いた」
少しペースを上げた岬の歩みは、前方に歩いている凜の姿を捕らえた。
岬は彼女に駆け寄って話しかける。
「長條さん、おつかれ」
「…お疲れさま」
凜は若干嫌そうな顔を浮かべつつも言った。
岬は微笑む。
「嫌な顔しないでよ、一緒に帰ろ」
「…構わないでって言ったのに」
「運が悪かったと思いなよ」
岬はニッと笑った、自分でも高得点な笑顔だと思うほどに。
しかしなおも凜は無表情だった。
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