長條さん

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「…もう」 「ごめんね、怒った?」 「…別に怒ってない」 「そっか、もう学校には慣れた?」 「普通」 「そっか…」 いつも通り、2人は黙って歩く。 しかし圧迫感を岬は感じなかった。 奇妙な心地よさを感じていたのである。 「ねえ聞いていいかな?」 「…ダメって言っても聞くんでしょ?」 「ありがと」 岬は笑った。 凜は呆れたように目を閉じる。 「なんでこの学校に来たの?」 「私がこの学校に来ちゃダメなの?」 「もう…そういうこと言ってんじゃない、この学校に来た理由を知りたいの」 「関係ない」 「そう、私には関係ない」 岬は何故だか確信した。 根拠はない。 しかしこの子は私と似ていると思ったのだ。 「神宮さん」 「なに?」 「坂田さんのため?」 「違うよ」 「嘘」 凜は岬の顔をしっかりと見つめた。 こんな風に彼女に顔をまじまじと見られるのは初めてかもしれないと岬は冷静に考えた。 そして少しだけ岬は笑った。
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