長條さん

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「でも私はレフトになったことないな、ずっとセンターだよ」 「中学もやってたの?」 「うん、一応1年からレギュラーだったよ」 「すごいね」 「すごくないよ、背だけは高かったからね、後月島さんも1年からレギュラーだった」 岬がからかうように言った。 凜は表情を変えず「そうなんだ」と興味なさげに言う。 「月島さんと同じ学校だったんだ」 「この学校にいる生徒はほとんどが同じ学校だったよ、小さな町だから」 「今のバレー部の人もみんなバレーやってたの?」 「違うよ、中学でやってたのは私と月島さんと宏美だけ」 「宏美って坂田さんだよね?」 「うん、ほかの子は高校から始めた子だよ」 「そっか…」 「そうだ」 「なに?」 「月島さんって長條さんから見てうまい?」 「別に上手くはない」 平然と言った凜の態度がおかしくて岬は笑った。 凜は不思議そうだ。 「そっか、我らがエースもその程度か」 「神宮さんって性格悪い」 「女の子はみんな性格悪いよ」 悪戯がばれた子供が誤魔化すときのような笑顔で岬は笑った。 凜も顔がわずかにほころぶ。 「今日の練習も頑張ろうね」 「うん」 凜は食べ終わった弁当箱をカバンに戻した。
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