長條さん

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* * * * 「そろそろ試合したいね、強力な助っ人もいることだし」 部活が終わり、バレー部の2年は部室で着替えていた。 いつも通り岬が練習着を脱いでいると、春が口を開いた。 「ねえ?かんな」 「そうだね、楽勝なんじゃない?長條さんがいれば」 春とかんなはニヤニヤしながら凜を見る。 くるみはおどおどと2人を見つめていた。 凜は喋った2人には目もくれず黙って練習着を脱いでいた。 宏美は眉間に皺を寄せている、先ほどの『助っ人』とという言葉が気に入らなかったのだろう。 その言葉は自分らの仲間と認めていないともとれるから。 「長條さんって私のこと嫌い?」 「別に」 凜は一切の間を置かずに答えた。 その圧倒的早さに岬は噴き出しそうになったがなんとかこらえた。 当の春は余裕ぶったにやけ面で凜を見つめている。 凜はカバンから、昨日岬があげた清涼剤を取り出し遠慮しがちに体に塗った。 そのとき自分を一瞥したのに岬は気づいたので、春にばれない程度に微笑みを返した。 「あら長條さん、今日は臭いに気をつかってるんだ、やっと自分が女の子だと自覚したの?」 春は口に手を当ててクスクスと笑った、かんなもつられて笑いだす。 「月島さん!」 宏美がムキになって声を張った。 春はそれを軽く流す。 そしてふと気づいたように岬を見つめ、目を細めた。 「なに?神宮さん?」 「何が?」 「何か私に言いたいことがあるみたい」 「何もないよ」 2人はにらみ合ったまま黙った。 さっきの春の言葉は岬の神経を逆なでするには十分だった。 岬は久しぶりに明確な敵意の視線を春に向けたのだ。
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