長條さん

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* * * * 「ありがとうございました!」と体育館に挨拶した後、岬たちは部室で制服に着替えていた。 この狭い部室には部員全員は窮屈なのでまず2年の岬たちが中に入っていた。 しかしこの空間は5人でも狭い。 むせかえるような暑さの室内で岬は着ていたTシャツを脱ぎ、下着姿になった。 ピンクのブラジャーが露わになったが、ここには女子しかいないし、中学生のときから部活はしていたので人前で脱ぐことに抵抗はない。 バッグから汗の臭いを消すためのデオドラント兼清涼剤を取り出し、容器の中に入っている液体を手の上に垂らした。 ひんやりとした液体を上半身にまんべんなく塗り付ける、体の熱が溶けてきてさっぱりとしたレモンのような匂いが部室に広がる。 汗臭く蒸し暑い部室は、岬の使った清涼剤のレモンの匂いとほかの部員が使う様々な清涼剤の匂いが混ざり合って異質な香りが蔓延している。 「長條さん、もう部活には慣れた?」 「うん」 宏美がそう聞くと、凜はそっけなく言葉を返した。 「な、長條さんはどうしてこの学校に?前いた学校って郷來(ごうらい)高校だったよね?バレーがものすごく強い」 「別に」 流石の宏美もどう対応していいか分からないようで顔を強張らせていた。 凜は我関せずと言った表情で淡々と着替えていた。 それを冷めた目で見つめていた春が口を開く。
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