されど少女らは焦がる

彼女たちの夏

「じゃあ次はカットの仕方」

「え？まだあるの？」

「悪いところ聞いたの神宮さんでしょ？」

「…はい」

岬の沈んだ顔に構わず、凜はテキパキと話を進める。

「カットはいつも返したい方向に体を向けるの、横に打たれたなら回り込むようにして…」

凜は見本を見せながら説明する。

「やっちゃいけないのは腕だけでとろうとすること、これは絶対ボール弾くから、それと神宮さん少しでも高いボールが来たらのけ反ってるけどこれもやっちゃダメ、ボールが後ろに飛ぶから、やるなら突っ込むようにカットして、少なくとも前にボールは飛ぶ」

「は、はい…」

「基本的に相手のスパイクはセッターにきっちりとは返らない、だからどれだけ味方がツ―を上げやすいようにカットするかが大事なの、スパイクカットは出来るだけ上に、そして前に返して、後ろに弾いたら終わりだけど、前なら相手コートに返って試合は続く」

「そのとおりだと思います」

「それから…」

凜が続きを話そうとすると、宏美の声が体育館に響いた。

「ツーメンするよ！」

「はい！」という勇ましい声が部員一同から発せられる。
岬も遅れ気味に返事した、そして凜も。
凜はいつもの平然とした顔で大きな声を出した、それがなんだかアンバランスで岬にはおかしく思えた。