長條さん

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長條さん

海の潮風が肌に触れる田舎町。 この町にある『青美蝶高等学校(あおびちょうこうとうがっこう)』、通称『青高』の女子バレーボール部に新宮(しんぐう)(みさき)は所属していた。 今我々女子バレー部員は古臭い体育館に汗を垂らしながら練習している、嫌なやつはいるけどそこそこの平穏が保たれているこの部活が岬には居心地がよかった。 3週間前、あの子が来る前は。 「レフト!」 キャプテン兼セッターの坂田(さかた)宏美(ひろみ)はいつもの通り声を張り上げた。 コートの少し外に出て、レフトサイドから力強くステップを踏んだその少女は、体全体のバネを使って跳び上がった。 空中で背を反らし、両足を曲げる。 滞空時間が長いせいで、彼女は空中で静止しているようだ。 「んっ!」 微かに力を込めた声と共にボールは床に叩きつけられた。 豪快な音が体育館に響き渡る。 「ナイスキー!」 少ない部員たちから歓声の声が上がる。 その凛々しい彼女の姿に一部の者は尊敬を、一部の者は嫉妬をしていた。
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